2010年7月16日金曜日

ホテルルワンダ

映画、ホテルルワンダを知っている人は多いと思う。1994年の虐殺を描いた作品だ。

あのホテルはいまも同じ場所で営業中だ。名前もそのままの「ミルコリン」。フランス語で1000の丘という意味。

僕はここのプールサイドのカフェでよくコーヒーを飲みながら、パソコンを開いたり本を読む。トゥンバの山奥の生活から解放され、都会的生活への渇きがここで癒されるのだ。とてもスタイリッシュで、他のルワンダのホテルとは比べられくらい良いところだ。

映画にあった1994年当時の面影は全くない。このプールが虐殺から逃げてきた人たちの飲み水になっていたとは想像できない。

ルワンダ、いまは平和国家だ。経済も順調に発展しつつあり、紛争ともほぼ無縁。ギャップに少し戸惑うが、この平和はいつまでも続いてほしい。

ルワンダ携帯電話事情

ルワンダ国民はかなりの割合で携帯電話を持っている。学校の同僚は全員持っており、ハウスボーイでさえも持っているし、掃除のおばちゃんも持ってい る。みんなケータイ大好きなのだ。

現在ルワンダ国内では3社の携帯電話会社がサービスを提供している。
3 社ともエリア範囲のカバー率はしっかりしており、山奥のトゥンバでも3社とも問題なく使える。 通話方式は全社とも日本より一歩遅れた第2世代のGSMだが、全く問題ない。


ルワンダの携帯 電話のシステムは、今日本で話題のSIMフリーなのだ。携帯電話機が一台あれば、
バッテリパックの裏にあるSIMカードを交換して、簡単に 別会社の携帯電話にできる。

SIMカード自体の値段は500Frw(≒80円)。通話料金はプリペイド式で、SIM カードにお金をチャージして通話する。


写真の左が南アフリカ系のMTN。先日のワールドカップでも沢山広 告が出ていた、黄色い看板のあの会社だ。真ん中がRwandaTelで、右がTIGO。携帯電話機はNOKIA製。

大 雑把に言うと、MTNがドコモで、RwandaTelがau、TIGOがソフトバンクといった所。

TIGOは東アフ リカと南米を中心に展開している会社で、最近は派手な宣伝と低価格を売りに一気にユーザーを広げている。首都のキガリを歩いていると子供がTIGOマーク のかばんを背負っている。宣伝用のばら撒き作戦は功を奏しているようだ。

国内通話料金はMTNで1分 20~30Frw(3~5円)、TIGOで1分10Frwだ(1.5円)。
日本への通話も安い。1分で165Frw(26円)。日本から ルワンダだと1分で300円ぐらいだったと思う。


しかし、いくら携帯電話料金が安いといっても、一日500Frwで生計を立ててるルワンダ人にとってはやはり高い。メール(SMS)もルワンダ人はあまり好きじゃないようだ。

だから彼らはよく、ワン切りをしてくる。相手からのワン切りが「元気?」の意味らしい。初めは迷惑電話ばっかりだなあ~と腹が立っていたけど、意味を知って納得。だから僕もワン切りが着たら、「元気だよ」の意味でワン切りをする。すると、大抵もう一度ワン切りが返ってくる。「そりゃあよかった」の意味、かな?

ちなみにアフリカ諸国では、固定電話はあまり普及せず、携帯電話のほうが広まった。つい最近まで電話なんぞ見たことも無い人たちが、いきなり携帯電話を持ち始めたのだ。

これは携帯電話のインフラ整備が楽だからだ。固定電話は端末のある場所全てに有線ケーブルを敷設しなければならないが、携帯電話は基地局をところどころに置けばいいだけなので、アフリカのような未開発な土地の多いところにはうってつけなのだ。


僕は日本で携帯電話が流行りだしたとき、固定電話があるのに面倒くさいものが出たなあと思いつつ、結局は流行に押される形で購入したが、携帯電話そのものの必要性には常に疑問を感じていた(今でも感じている)。


だがルワンダを初め、アフリカ諸国の文化や社会は携帯電話によって日本以上に大きく変わっていくだろう。これが良い方向へいくのか、悪い方向へいくのか分からない。しかし、アフリカ人にとっては、携帯電話の登場が一大革命だったのだ。

ワールドカップ 南アフリカ大会

日本でも盛り上がったと思うけど、初のアフリカ開催ということで、ここルワンダでも大盛り上がり。もともとサッカーはみんな大好きなのだ。

教員宿舎には、校長の大盤振る舞いで、衛星テレビまできたのだ!みんなテレビに釘付け。

さっそく僕も日本対カメルーン戦をみたが、日本が勝利。やったーと浮かれるとみんなも一緒に喜んでくれる。だが、喜ばない人も。同じアフリカ国が負ければいい気はしないのだ。難しい。

協力隊員同士で首都キガリのバーに集まり、デンマーク戦を観戦したときの
熱狂は、周りの一般のルワンダ人が驚くほど。彼らも巻き込んで、大盛り上がり。

そして、パラグアイ戦。トゥンバの食堂で見てると、生徒たちも一緒になって応援してくれた。

結果は残念だったが、とてもすばらしい試合をしてくれた。

ワールドカップが始まる前ほとんど興味がなかったのだが、日本チームの予想外の素晴らしさに期間中はすっかり虜に。


ありがとう、ニッポン。

2010年7月11日日曜日

活動先訪問その1

やっと学校が暇になったので、JICAボランティアの同期の活動先を訪ねることにした。

村落開発普及員の同期は、パンの協同組合を作ることを模索中だ。同じ地域に住むルワンダ人の有志でパンがまを作り、パンを焼き、販売をするのだ。

やはり一番の問題はお金だ。残念ながら、お金の工面がつかず未だにパンがまを作ることも出来ない状態だ。

お金が絡む問題は仲間割れも引き起こす。パンがまを作る場所をリーダーの家に置くことにしたら、それに反対する人たちが出たそうだ。メンバーとはいえお互い不信感があり、結局そのメンバーは一新することになってしまったそうだ。


同期の役割は、お金を出すことではなく、アドバイスをすることに徹している。ルワンダ人自身で解決すること、つまり自立を促すためだ。


だがルワンダを含むアフリカ諸国の人々は、お金をJICAを含む援助団体からタダでもらおうする。いわゆる援助慣れだ。お金は出せないといくら言っても食い下がってくるそうだ。


今後はマイクロクレジット(※)を薦めていくそうだが、本人たちは渋っているそうだ。やはり返さなくてはならないお金だからだ。


だがタダのお金は、真剣になれないと思う。不必要なものに投資してしまいやすい。これまでの欧米や日本による無償資金提供が、逆にアフリカの発展を阻害してきたという話を聞いたことがある。


やはり真剣に自立を促すなら、なるべく本人たちの力でなんとかしてほしい。同期の奮闘に期待したい。


※・・・貧困者向けの低額融資のこと。担保はとらず、数人のグループをつくらせ、共同監視のもと返済していく。ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスの提唱したグラミン銀行が有名。

ハウスボーイ

13人家族(ルワンダ人12人+日本人1人)の我が家には、ハウスボーイが一人居る。皆でお金を出し合って雇っているのだ。彼の名前はデオ。仕事は料理と洗濯と雑用。



毎日毎日せっせと働いている彼を見るとつい感心してしまう。朝から炭で火をおこし料理の支度をはじめ、その合間に洗濯をする。夜の10時ごろまで働きづめだ。そして給料は20000Frw(約3300円)。



ふだんはぶっきらぼうで気楽に話しかけるのはきがひけるが、カメラを向けると恥ずかしがって隠れてしまうなかなかシャイな一面も。


つい2週間前から彼の姿が見えない。どうやら病気の兄弟がいるらしく普段から週末はキガリへ行っていたそうだ。その兄弟の病状が悪化したらしく、もうこれないそうだ。そうだったのか。


そして先週から新しいハウスボーイが来た。今度は気の弱そうな従順な感じ。名前はデオス。なんだか似てるなあ。

モスク礼拝

インドネシア人先生のゼンさんとキガリへ行く用事ができた。目的はモスクへ行くこと。インドネシアはイスラム教徒が多く、ゼンさんもムスリムなのだ。この日は金曜。金曜礼拝の日だ。


モスクへは異教徒の僕も簡単に入れてもらえた。入り口で靴と靴下をぬぎ、手足と口の中を水で洗い清めた後、礼拝堂へ。

喧騒のキガリ中心部にあるとは思えないほど静かで大きな伽藍に、一人の老人が柱によりかかりコーランを読んでいた。他には誰もいない。残念ながら到着が少し遅れたため、金曜礼拝は終わっていたのだ。


ゼンさんは一人、祭壇のまえで祈り始めた。普段はにこやかな彼も、祈るときの姿は全く別人だ。僕は後ろのほうで正座をしながら、その姿をただじっと見ていた。


規則正しく厳かなその祈り方は、確固とした依るべきものをもったムスリムのプライドが感じられた。祈りが終わり、ゼンさんが別のムスリムと会話をしているのを見ると、なんだか遠くの人のように感じられた。そして同時に羨ましくもなった。


羨ましいのは彼に仲間が出来たことではなく、深い宗教性に裏打ちされたゼンさんの存在だ。


僕ら日本人はなんだかふわふわした存在で宗教からは一歩置いているが、彼は生活に宗教がしみこんでいる。


ルワンダを含む世界の国々ではキリスト教やイスラム教を信仰し、それを自分のアイデンティティにしている。それをみていると、自分はこれでいいのかと不安になってくる。


僕は今の日本の束縛されない宗教観は好きだ。だから決して何かの宗教に入りたいわけではない。だがこの状態の欠点は、自分の中にいざという時の心のよりどころが無いことだと思う。


世界は、一人で生きていくには過酷で、吹きすさぶ嵐のようなものだと思う。その前で依るべきものをもたない人間は、簡単に自我が押しつぶされてしまうのでないだろうか。

南南協力


6月は、通信技術の専門家がトゥンバ高等技術学校(TCT)に来ていた。目的はルワンダ人先生への技術移転。ついでに僕も参加したが、通信分野は素人の僕でもとても分かりやすい講義だった。


1ヶ月間の集中講義は、PCネットワーク、Linuxサーバを使った電話交換システムの構築、光ファイバ通信などなど。理論だけではなく、実習を取り入れた授業だったので、やはり理解がとても深まる。


このインドネシア人講師のゼンさんは、かつて日本が支援したスラバヤ工科大学(EEPIS)の講師。かつてのEEPISも現在のTCTと同じ状況で、理論中心の授業だった。日本からの専門家の指導で建て直しによって、いまではインドネシアでも一番の人気工科大学になったそうだ。


実はTCTにはネパールやインドからも専門家を招いている。同時に、ルワンダ人先生をそれらの国々へ研修生として派遣しているのだ。今もET学科からは5人がインドネシアへ研修にいっている。


先進国が途上国を支援するいわゆる南北協力ではなく、途上国同士で支援する南南協力だ。JICAはその支援をし、TCTはその先駆けとなっているのだ。


多国籍のTCT。なんだかわくわくするような学校にきています。