2011年4月20日水曜日

追悼の炎

井形に組まれた大きな薪に火がつけられた。


4月8日、虐殺された人々を偲ぶ集会が行われた。虐殺週間中もっとも大きい集会だ。


文化省の大臣、軍の将軍、郡長などが出席しそれぞれ虐殺を繰り返さないことを誓い、その後虐殺によって両親を亡くしたTCTの卒業生が鎮魂の歌をうたった。


虐殺が行われた政治的な背景を、学生が劇として演じた。ツチ族とフツ族は仲良く暮らしていたが、政治家が引き裂き、互いを殺すように仕向けたという内容だ。


そしてフツ族がツチ族を殺す場面が演じられたその瞬間、
「イウェー!」
と、動物の叫ぶような声が後ろから聞こえた。
はっと振り向くと、女の人が顔を抑えてうつむいている。


すぐに周りの人が両脇から抱えて会場の外へ連れ出した。
だが女性は叫び声をあげながら、もがき、壁をたたき、いつまでも泣き叫んでいた。


衝撃だった。
否が応でも、この国で本当に起こった出来事なんだ、と思い知らされる瞬間だった。


そして同時に津波に飲み込まれていった人たちのことを考えた。 すべてを飲み込んだ壁のような津波が、次々と人々を飲み込んでいく様を。


僕は呆然と立ちつくしてしまった。言葉にならない悲しみは、いつでも世界中で起こっているのだ。死や悲劇は決して自分と離れたところに起こるわけではない。


歌い終わった卒業生が、当時の様子を淡々と語る。
「私の母は、男達に殺されました。目の前で両腕を切り落とされ、足を切断され・・」
隣で僕に解説してくれた学生が、これ以上言葉を見つけられないよと言った。僕はそのまま卒業生の顔を眺め続けた。


パチパチとはぜる炎が人々の顔を照らし、白い煙とともに夜の闇にに吸い込まれていった。
息の白い、寒い夜だった。

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